2002年10月 農業土木学会中国四国支部 第57回農業土木学会 中国四国支部講演会

香川農地防災事業北山新池洪水吐ラビリンス堰水理模型実験


香川農地防災事業所 大林 由明
(株)カイハツ 福井 章夫 ○福田 幸輝
(株)マオカ設計 満岡 重一

1.はじめに
香川県下には多数の農業用ため池が存在し、その一部は老朽化しているため、中国四国農政局香川農地防災事業によってそれらの改修事業が行われている。北山新池もその一つであり、改修事業に先立って洪水吐の検討が行われた。その結果ラビリンス堰が導入されることとなり、その水理特性を解明するため、水理実験が実施された。北山新池の概要は、有効貯水量26,000㎥ ,堤長150m,堤高9.1m,設計洪水量10.57㎥/S である。

2.ラビリンス堰
ラビリンス堰は、写真-1に示すようなジグザグの平面形をした堰であり、ジグザグであるがゆえ、直線形の堰に比べて放流能力が大きく、同一流量を流す場合の越流幅や越流水深が小さくてすむ。他方、流量係数も各部の形状・寸法により異なり、国内での実績にも乏しい。

農業工学研究所では、わが国のため池や調整池などの小規模洪水吐で、現場打ち鉄筋コンクリ-ト製ラビリンス堰を想定した、堰高Pと堰厚Tの比、T / P= 0.3の場合で、ジグザグの密度を表す縦横比W/P= 2の形状A,およびW/P= 3の形状Bを対象として、各部寸法式と流量係数グラフを示した。この結果は土地改良事業設計指針「ため池整備」に取入れられており、ため池改修設計に用いられている。
ここに、Wは越流幅W₁ から隅角部をのぞいた幅で、W=W₁- 2 ・b(図-1)


3.原設計と実験結果
水路流入式、越流堰式および側水路式洪水吐について比較検討を行い、規模を小さくするためラビリンス堰を導入することとした。型枠を含む経済比較から越流水深H =0.45mになるように諸元を設計することとし、上述の形状A,形状Bの寸法式と流量係数を基に、正面越流堰タイプにおいて、それぞれ堰高を0.1m刻みで変えて計算を行った。流況の安定性と施工性に問題の生じない、最も経済的な形状を検討した結果、定まった形状は次のとおりである。

形状:A,堰高P=0.80m,堰厚T=0.24,H / P=0.56,流量係数C d = 4.1 。
上記の条件からは必要洪水吐幅B ‘ =8.54m,1サイクル越流幅W₁ = 2.071m,サイクル数n= 4.124 となるので、n= 4.5とし、したがって堰幅B= 9.32mとなった。
図-2に原設計図を示す。


以上のラビリンス堰原設計について、流量係数、越流水頭、流況などを検討するために水理模型実験を行うこととした。模型縮尺は1/12である。実験では設計洪水量( 1/200 年確率)および1/100年確率洪水量を中心に流量を変化させ、各部分の流況を観測した。
原設計に対する水理模型実験の結果より、以下のことが判明した。

①.左岸表法部からの越流量により移行部に衝撃波が発生し、設計流量では常流になるべき移行部
の流況が射流となった。
②.越流水深が大きくなると、斜堰部の勢いが大きく、隅角部の流れが斜堰部の流下方向となり、
ラビリンス堰正面からの越流量が小さくなる。
③.接近水深(=越流水深H)が設計値=0.45mより大きく、0.48mとなった。
④.移行部以降の各部の水深は1/100, 1/200年確率洪水量の設計水深とほぼ等しい。
⑤.H / Pが大きくなると、形状Aの基準値より流量係数が多少低下する。

またT / P= 0.3による堰厚0.24mは施工上やや薄いきらいがある。


4.改良設計と実験結果
模型実験の結果に基づき、図-3のように改良して再実験を行った。
①.衝撃波を少なくするために左右対称とし、サイクル数nを4.5から4.0に変更。
②.正面からの越流量を大きくするために、正面内幅(図- 1のa )を0.24mから0.30mに変更。
③.施工性向上のために堰厚Tを0.30mに変更。

再実験の結果より、以下のことが判明した。
①.ジグザグの平面形に起因する移行部の衝撃波が残ったが、小さくなった。
②.正面からの越流量が大きくなった。
③.設計洪水流量において、接近水深が0.48mから0.43mと小さくなった。
④.流量係数は、H / P≧0.54、すなわち越流水深0.43m以上では、第1回実験(原設計)より
大きくなり、流下能力が増す。越流水深0.43m未満すなわち設計洪水量以下の流量では、第
1回実験より小さくなった。

あわせてサイクル数の減少,堰厚の増から施工性が良くなり、コンクリ-ト量の増も型枠面積の減少と相殺され経済的にも有利となったため、この結果に基づいて洪水吐の設計を行った。

5.経済性
ラビリンス堰の導入で洪水吐施設を小規模化したことによるコスト縮減率を算定する。ラビリンス堰導入前の堤体工事と洪水吐工事を合わせた経済比較で最安価となる側水路式(堰幅17.0m , 洪水吐延長45.1m , 越流水深45cm )とラビリンス堰導入後の正面越流堰式(サイクル数4.5, 堰幅9.32m , 洪水吐延長29.5m, 越流水深45cm )との金額比率は1.89:1.00となり(表- 1)大幅なコスト縮減が図れた。

6.まとめ
ラビリンス堰は、標準型越流堰と比較して流量係数が2倍程度となり、洪水吐に導入すれば経済的に有利であり、より効率的な公共事業が求められている中で、ラビリンス堰はこれを満たす新技術と言える。しかしながら流量係数は一定でなく、設計指針「ため池整備」に示されている形状A,形状Bに準拠しなければならないきらいがある。
ここでは、形状Aを基本とした堰の実験流況から改良を行い、再度の模型実験結果から、流況が安定し、越流効率の良いラビリンス堰を設計することが出来た。今後の設計上、形状A,形状B以外について流量係数の検討が望まれる。

(2002年10月 農業土木学会中国四国支部 第57回農業土木学会 中国四国支部講演会)

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